ラ・スピネッタ醸造家ジョルジュ・リヴェッティ来日セミナー

気鋭の醸造家ジョルジュ・リヴェッティ来日！

2023/5/13

ラ・スピネッタ社とコントラット社のエノロゴ兼CEOを務めるジョルジュ・リヴェッティ氏が来日。
彼が今夢中になって取り組んでいるコントラットのスプマンテの試飲セミナーで、貴重なお話を聞く事が出来ました。

イタリアのおしゃれでハンサムな紳士といった風貌のジョルジュ氏ですが、とても気さくなお人柄。
セミナーは、次のような一言からスタートしました。
『多くの人の前で話すのは、何度経験しても緊張します（笑）。スプマンテを飲むのに良いシーズンがやって来ましたね。
今日は皆様に【アルタ・ランガ】という言葉を覚えて帰って欲しいのです。』

このアルタ・ランガとは、ピエモンテ州の南部とリグーリア州を隔てるアペニン山脈北側に広がる標高の高い丘陵地帯に位置する産地名。
2002年にD.O.C.認定され、瞬く間に注目度が高まり、2011年にはD.O.C.Gに昇格しました。歴史はまだ浅いものの、イタリア国内の他の瓶内二次発酵スプマンテと比べても厳しい生産規則が定められています。ラ・スピネッタのような有名バローロの造り手や、ピエモンテワインの明確なアイデンティティをもったスプマンテとして、独自の地位を確立し始めています。

ジョルジュ氏は、コントラットのスプマンテを語る上で次の4つのポイントを述べています。
①アルタ・ランガで今まで誰も手を付けていない土地
②とても高い標高にある自社畑
③1867年から使用している歴史ある醸造所
④ジョルジュ氏自身のシャンパーニュへの強い憧れ

まずD.O.C.Gアルタ・ランガの自社畑について。
アルタ・ランガでは生産規則では標高250m以上と定められていますが、500mほどの畑が多く、800mに及ぶこともあります。
コントラットの畑は低いところでもロアッツォーロの標高600ｍ、所有している約85％にあたるボッソラスコエリアの畑は700~880mと、とても標高の高いエリアに位置しています。より冷涼な気候と昼夜の寒暖差により、ブドウの糖度がゆっくりと上がり、フェノール類も理想的な成熟をしながら酸を保持。収量も、規定の11t/haに対して4~5t/haと厳格に制限し、高品質なブドウが収穫できます。
『標高が上がると収量は下がります。低収量で素晴らしいブドウだけを育てているのです。』（ジョルジュ氏）

シャルドネは石灰質土壌、ピノ・ネーロは石灰質に粘土質が混ざった、茶色い土壌。
どちらも痩せた土壌のためブドウ樹が地中深くまで根を張り、栄養分を届けます。
ブドウ樹が付ける房の数も少なく、酸と糖分、アロマをバランス良く兼ね備えた理想的なブドウが結実。これにより、補糖やアッサンブラージュのテクニックに頼らない上質な瓶内二次発酵のスパークリングとなるのです。

次にコントラットが誇るカテドラル（大聖堂）セラー。
1867年の創業以来、ピエモンテ州のバルバレスコD.O.C.Gエリアから東に約10km離れたカネッリという村に居を構えるコントラット社。
カネッリの丘の地下32m、大理石をくり抜いて造られた荘厳な自社セラーは【カテドラルセラー】と呼ばれています。
その広さは約5,000平方メートル、年間を通じて温度12～13度、湿度も適度に保たれ、今もコントラットのスプマンテ熟成に使用されています。
【LE CATTEDRALI SOTTERRANEE DI CANELLI（カネッリの地下大聖堂）】としてピエモンテのワイン造りの歴史と併せて、ユネスコ世界遺産に登録されています。

もう一つの重要な要素がジョルジュ氏自身のシャンパーニュへの情熱です。
元々、大のシャンパーニュ好きであったジョルジュ氏。ジャック・セロスやエグリ・ウーリエといった今では圧倒的な人気を誇るRM生産者を始め、厳選した一流のシャンパーニュ達をいち早くイタリアへ輸入していました。この経験により、彼は『素晴らしいシャンパーニュの90％はブドウ畑から造られる』という強い確信を持っていました。
『コントラット社のスプマンテの品質の高さも知っていました。ちょうど買い手を探しているというのを知り、断る理由なんて見当たらなかったのです。受け入れる選択肢以外に思い浮かびませんでした。』
ジョルジュ氏のシャンパーニュへの憧れ、独自のコネクションは、コントラットのスプマンテに良い影響をもたらしています。
実際にシャルドネの自社畑にはジャック・セロス、ピノ・ネーロの自社畑にはエグリ・ウーリエからアドバイスを受け、ブドウの品質にこだわっているとジョルジュ氏は語ります。

コントラット社は、イタリアで初めてミッレジマート（ヴィンテージ）のメトド・クラシッコ（シャンパーニュと同じ瓶内二次発酵による製法）のスプマンテを製造した歴史あるワイナリーです。ジョルジュ氏がオーナーとなった現在も変わらず、同様のスプマンテを造り続けています。
年々進化を遂げるコントラットのスプマンテのポイントは【ミッレジマート】／【長期熟成】／【パドゼ（補糖無し）】。
各キュヴェに用いるのは、畑に由来する天然酵母。それぞれに合うものを選別して使用しています。
人工的なテクニックでワインに手を加えるのではなく、ジョルジュ氏が願うのは『ヴィンテージを表したワインであること』。
そのためには、ブドウ畑での作業とカンティーナ（醸造所）での作業のどちらも重要だと考えています。

『偉大なバローロを造るような仕事が求められます。卓越したメトド・クラシッコとは、まず卓越したワインでなければなりません。
ラ・スピネッタでのワイン造りが、コントラットでも大いに役立っています。ストラクチャーがあり、複雑な味わいにミネラルが備わっていながらも柔らかな飲み心地。この高い品質は飲んでいただければ理解してもらえると思います。』

テイスティングで感じたのは、伸びやかな酸と味わいの厚みを支えるミネラル感。そして丁寧な手仕事で生まれるシャンパーニュに共通する複雑な風味。
それは絶妙な熟成感であり、奥深さであり、香ばしさでもありました。パドゼとは思えないほどのナチュラルな果実味もあり、ブドウそのものの力強さが存分に表れています。
唯一無二のエレガントな風格をもたらす美しい酸は、今後の熟成のポテンシャルも示しています。

セミナーの最後に語ったジョルジュ氏の言葉です。
『ワインボトルの後ろにある歴史、背景を感じながら、楽しんでほしいです。ボトルの後ろに誰がいると思いますか？
ブドウを造る農民、ワインを造る醸造所の人々です。ピエモンテには実直に、しっかりと畑で働く人が多いんです。
偉大なワインを造る為に真面目に仕事をしている人々の存在、思いを感じてください。私は生まれ育ったピエモンテを誇りに思い、敬意を払いながらワインを造っています。』

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