ピエモンテ州のバルバレスコDOCGエリアから東に約10km離れたカネッリに居を構えるワイナリー『コントラット』。
1867年創業の老舗で、1919年にイタリアで初めてシャンパーニュと同じ瓶内二次発酵製法によるヴィンテージ入りのスプマンテを造りました。
当時は糖分が残った甘口のスパークリングワインが主流でしたが、コントラットではいち早く辛口のスタイルを取り入れました。
その頃繁栄を極めていたイギリスで、インターナショナルな味覚を持っていた人々が求めていたのがドライな味わいのスパークリングワイン。
コントラットでは英国王室からの要望を受けて、辛口タイプのスプマンテを完成させました。
長らく英国王室御用達となり、イギリス人向けの輸出が拡大。イギリスの植民地だった各国王室、さらにはサヴォイア王家やバチカンへも納めるまでに発展しました。
他国ではまだ甘みのあるスパークリングワインが売れていたため、この革新的な辛口スプマンテには”For England”の名が付けられました。
高級スプマンテ・メーカーとして知られていたコントラット社でしたが、第二次世界大戦の影響やフランチャコルタの台頭により、かつての勢いを失っていました。
創業者の手を離れ、2007年に”バローロ・ボーイズ”の中心的存在として名を馳せた気鋭の醸造家、ラ・スピネッタ社のジョルジュ・リヴェッティ氏が醸造に携わります。
ジョルジュ氏は元々大のシャンパーニュ愛好家で、ジャック・セロスやエグリ・ウーリエといった職人気質のRMが注目される前から、愛飲し、イタリアへ輸入をしていました。
クラフトマンシップから生まれる真のシャンパーニュを熟知していた彼は、ラ・スピネッタでのブドウ栽培技術と、コントラットのスプマンテ造りのノウハウを融合すれば、高品質なシャンパーニュと肩を並べられるスプマンテがきっと造れるはずだと確信。
2011年には遂に自身がオーナーとなり、偉大なシャンパーニュに並ぶ究極のメトド・クラシッコ・スプマンテ造りへの挑戦を始めました。
ジョルジュ氏は『ワイン造りの90%は畑での仕事にある』と考え、テロワールを表現したブドウ栽培を実践しています。
自社畑があるのは、ピエモンテ州で瓶内二次発酵のスプマンテを生み出すアルタ・ランガDOCGの標高の高いボッソラスコ。
近年注目を集めるこの地の土壌を入念にリサーチし、購入を決めた畑の約85%が標高700~880mに位置。
低い場所でも標高600mを誇り、より冷涼な気候で、糖度がゆっくりと上がる間にフェノール類も理想的な成熟をしながら、酸が保たれた高品質なブドウが収穫できます。
醸造においても、ジョルジュ氏の細部までのこだわりが徹底されています。
現在は瓶内熟成もさらに伸ばし、自社の基準で最低48か月と法定規則よりも12か月長く設定。
さらにブドウのポテンシャルを最大限に引き出す事で、ドサージュ(補糖)を行わないパ・ドゼで仕上げています。
高品質なブドウを使っているからこそ発揮されている熟成のポテンシャルであり、また補糖といったテクニックに頼らないスプマンテ造りが実現されています。
ジョルジュ氏は次のように述べています。
『以前は最長で18ヶ月シュール・リー(澱と共に寝かせる)製法のスプマンテを造っていましたが、今では最低でも30ヶ月に変えています。ブドウの質が高くないと、長期間のシュール・リーは悪い結果をもたらす事がありますが、もちろんそんな事にはなりません。香り、味ともに複雑さが増して、より深みのある味わいになりました。』
コントラットのボトルに華を添える、アイコンであるシャンパーニュグラスを持って踊る女性のイラスト。
この印象的な絵は、ベル・エポックの時代に活躍したイタリア人デザイナー、レオネット・カピエッロ氏が1922年にコントラット社のためにデザインしたものです。
またミュズレにはラ・スピネッタ社を象徴するアルブレヒト・デューラーが描いた犀の版画があしらわれています。
長い歴史を刻むコントラット社への敬意と、ジョルジュ・リヴェッティ氏の矜持を感じます。
2ラ・スピネッタ社とコントラット社のエノロゴ兼CEOを務めるジョルジュ・リヴェッティ氏が来日。
彼が今夢中になって取り組んでいるコントラットのスプマンテの試飲セミナーで、貴重なお話を聞く事が出来ました。
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